「なぜ現実的な安全保障を共有できないんですかね?」駒崎弘樹が細野豪志に切り込む!

2019.05.17

 

「なぜ現実的な安全保障を共有できないんですかね?」駒崎弘樹が細野豪志に切り込む!

 

なぜ細野豪志は自民党入りを決意し、二階派を選んだのか。

希望の党のころの話を含め、認定NPO法人 フローレンス代表理事・駒崎 弘樹さんに(思いがけず)切り込んでいただきました。

※この対談は、上記記事の続きとなります。

【駒崎 弘樹(こまざき・ひろき)】認定NPO法人 フローレンス代表理事/医療法人社団ペルル 理事長。1979年生まれ。慶応大学総合政策学部卒業。日本初の「共済型・非施設型」の病児保育サービスを東京近郊に展開する。また2010年から待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開、政府の待機児童対策政策にも採用される。内閣府非常勤国家公務員、内閣官房「社会保障改革に関する集中検討会議」委員、内閣府「子ども・子育て会議」委員などを歴任。

■細野豪志が自民党入りを決意した理由
駒崎さん:
細野さんは、虐待問題に関して熱心に動いてくださってて、ありがたいのですが、本当にメディアにめちゃくちゃ叩かれているので、真相を出したほうがいいんじゃないかと思っています。実際のところどうなんですか?

細野:
ご心配いただきありがとうございます。まず、虐待問題に関しては、6年前に私の2人目の娘が637gでたった9日間で死んでしまったという原体験があります。これは、私の使命だと思っており、票や選挙関係なく今後もやろうと思っているんです。

細野:
でも、野党の場合、やれることとやれないこととの壁があるんですよ。たとえば、児童虐待の問題も、長いあいだ法改正の議論を積み上げてきて、ようやく8合目まではこぎつけることができました。

でも、富士山と同じで、8合目からが大変で、ここまで来ると与党の世界になってしまうんです。それに、もどかしい思いをしていました。

駒崎さん:
そういうことだったんですね。しかしそうなると、「与党に魂を売ったのか」みたいな話になるわけじゃないですか。特に、今まで仲間だった人たちから「裏切ったのか」なんて言われるわけですよね。

細野:
私はもともと二大政党を掲げていました。安全保障は現実的な対応し、そこにイデオロギー対立を持ち込まない。でも、残念ながら2015年の安保改正以降はその基盤が崩れてしまって、野党のなかで安全保障で私が一緒にやれる政党がなくなってしまったんです。

内政は、リベラルの度合いの違いだと思っています。インクルージョンやダイバーシティを大事にする政党があっても良いと思っているんです。そういう意味では内政は野党に違和感はありません。

ただ、自民党は、最近になってLGBTの問題にも対応するなど、意外と柔軟なんですよ。

自民党にもそういうのを大事にする人がいるのであれば、その人たちと政策を作る選択肢もあるののだと思ったんです。

今まで二大政党・非自民でやってきたのを変えたのは、紛れもない事実です。一方で、今まで掲げてきた外交安保は現実主義であり、内政はリベラリズムを大事にする、という理念は変えるつもりはありません。

■10年後の政権交代を待つよりも、目の前のことをやりたい

駒崎さん:
なるほど。細野さんは自民党のなかでも二階派に入りましたよね。これはどういうことなんですか?

細野:
1つは地元事情で、二階会長がもともと遠藤三郎先生という、うちの選挙区の大先輩議員の秘書から政治活動をスタートしていて、地元に貢献してくださっていた、ということ。

もう1つは、二階会長は…誤解されているところもあるかもしれないけど、虐待のことに関して唯一、今年の代表質問で触れるなど、私の理念と一致する方なんですよ。あまりそんなイメージはありませんか?

駒崎さん:
すみません、なんか…怖いオッサンというイメージでした(笑)。自民党幹事長ということで、ゴリゴリなイメージを抱いていましたが、実はあたたかな保守的なところが通じ合っていたんですね。

細野:
もともと日本の保守社会って、里子をとるなど、弱者を包摂してきた歴史もあるんです。今やっているのは、それをもう一度呼び戻す作業なんですよ。

駒崎さん:
なるほど。これも一般人としての疑問なんですけど、とはいえ、細野さんは希望の党を立ち上げたり挑戦してきたじゃないですか。

当時目指していたものと、今目指しているものは違うのか、また、当時の失敗をどう消化しているのかを聞いても良いですか?

細野:
そこは、まったく同じなんですよね。

当時、私が民進党の限界を感じたのが安全保障です。そこで現実主義を貫けなかったので、もう限界が来ていると思い、党を出ました。残念ながら希望の党の理念はあまり国民に理解されなかったんですけど、実は、安全保障現実主義を掲げていたんです。

安保法制を認め、憲法改正については前向きに議論することを明確にし、内政ではリベラルな政策を掲げ、LGBTのことについても書いているんです。

しかし、結果はご存知のとおり無残なもので、今の日本社会では現実的な二大政党は難しいなと感じました。

10年後になれば、もしかしたら現実的な政権政党が自民党以外に出て来るかもしれません。でも私は、10年後の大きな政権交代よりも、目の前の子供や障害を持っている人たちに人生をかけたいなと思ったんです。

■現実的な安全保障を共有できないのは、世論に目配せしてしまうため?

駒崎さん:
たしかに、それは現実的な選択だなあと思うし、自分が今野党の議員だったらどうするかと思うと、納得できる行動かもしれません。

細野:
野党の拠り所というのは、「自分たちの実現したいことができるぞ」という「政権交代」なのですが、私には安保という国会議員として不可欠な要素で一致できる野党がないんですよ。

野党と、夢を共有できないんです。

駒崎さん:
なるほどね。でも、なぜ現実的な安全保障を共有できないんですかね?

細野:
そこは政治家の呪縛というか、世論かもしれません。

たとえば安保法制にしても、有事法制にしても、反対する人が必ずいるじゃないですか。それは、民主主義だから健全だと思うんです。2割くらいそういう人がいるなら、残りの8割で、4:4になれば、二大政党になるじゃないですか。

でも、野党はこの残り2割の人を味方につけないと、当選できないという小選挙区の呪縛があるんです。そこに目配せをしながら政策を作っていると、どうしてもそちらに寄ってしまう。その繰り返しなんです。

駒崎さん:
これはめちゃくちゃ難しいですね。民主主義の失敗的な話なのかもしれないですね。エッジ効かせた方が目立つしわかりやすいみたいな。

細野:
前回の総選挙で、希望の党と立憲民主党が野党第一党を巡って準決勝で戦って、立憲民主党が勝ちました。これは、明らかに国民の判断だったんです。

その瞬間、そういうふうに見られていないかもしれないけど、ストンと腹が落ちたんです。「これが国民世論か!」って。それまで二大政党にこだわりはあったけど、結果は厳然たるものだから受け止めないといけなかったんです。

駒崎さん:
なるほどねぇ。中道を行けたらまた、違ったんでしょうね。

細野:
そうかもしれませんね。

ちなみに、駒崎さんは自民党に期待する部分はありますか?

駒崎さん:
自民党内政権交代を期待する部分はありますよね。自民党のなかには保守的な人たちと、リベラルな人たちがいますが、リベラルの人たちと考えは合うし、まったく齟齬はないんですよね。

それでいうとある種擬似二大政党のような、新しい55年体制じゃないですけどそういうふうになっていくのかもしれませんね。

細野:
たとえば家庭の姿にしても、お母さんが専業主婦で、子どもが2人、みたいな家庭は今後少なくなっていくのが現実だし、LGBTも現実、そして虐待も現実なんですよね。

そんな現実を見たら、それに対応する以外の選択肢はないと思っているんですよ。国会でも、自民党の中でもしっかり議論して、その道を進んでいくべきだと信じているんです。

駒崎さん:
現実主義か理想主義かというと、現実主義に立脚した理想主義になるといいですよね。とりあえず目の前のことを進めてほしい、と思うし、そこは周波数が通じる政治家にメインストリームになってほしいです。それは党がどこであれ、です。

細野:
…エッジの立ったメッセージをありがとうございます。

駒崎さん:
あえての、です(笑)。

〈撮影・編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉

 

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